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最高裁判所第三小法廷 昭和42年(オ)1054号 判決 1968年10月29日

上告人(被告・控訴人) 共和化工株式会社

右訴訟代理人弁護士 吉村伊勢登

同 丸岡敏

被上告人(原告・被控訴人) 株式会社山形相互銀行

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人吉村伊勢登、同丸岡敏の上告理由について。

原審の確定したところによれば、菅千代建設株式会社から被上告人に対する本件約束手形の裏書の記載が一見あたかも取立委任裏書であるかのような記載形式となったのは、被上告人がさらに右手形を富士銀行に取立委任裏書をするに際して、「取立委任に付」と刻された印の一部が誤って欄をこえて前記菅千代建設株式会社から被上告人に対する裏書記載部分の日付の下に押捺されたためであり、右会社が裏書をするにあたって「取立委任に付」なる文言を付したわけではなく、また、裏書の態様の決定を被上告人に委ねて右手形を譲渡したわけでもなく、右裏書譲渡は手形割引を受けるためになされたものであったというのである。しからば、右会社から被上告人に対する裏書は、取立委任のための裏書ではなく、通常の譲渡裏書であったことが明らかであり、右譲渡裏書がなされた後被裏書人である被上告人がたまたま当該裏書欄に「取立委任に付」の文言を記載したからといって、右譲渡裏書が取立委任裏書にその性質を変ずるものではない。論旨は、右と異なる独自の見解に立って、原判決を非難するに帰し、採用するに足りない。

よって、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 横田正俊 裁判官 田中二郎 裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美)

上告代理人吉村伊勢登、同丸岡敏の上告理由<省略>

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